研究紹介

 

本研究班における4つの分科会(A〜D班)について

科学的根拠から社会実装までをつなぐ研究体制

慢性の痛みは、働く人の生活の質を低下させるだけでなく、就労継続や社会参加を困難にし、個人・企業・社会全体に大きな影響を及ぼします。
しかし、その実態や有効な支援策については、分野横断的・体系的な知見が十分に整理されていないのが現状です。
本研究班では、この課題に対応するため、疫学・臨床・国際比較・普及啓発という異なる専門領域を担う4つの分科会(A〜D班)を設け、相互に連携しながら研究を進めています。
 

4班体制の考え方

慢性疼痛に対する就労支援は、
  • 実態を「正確に知る」
  • 有効な「支援方法を確立する」
  • 国内外の知見を「比較・統合する」
  • 現場で「使われる形に届ける」
という一連のプロセスがそろって初めて、社会に定着します。

そこで本研究では、
  • A班がデータに基づき実態と課題を明らかにし
  • B班が臨床・リハビリテーションの視点から支援策を検証し
  • C班が国外の先進事例を調査・整理し
  • D班が成果を統合して社会へ発信する
という役割分担を行い、研究から社会実装までを一貫して見据えた体制を構築しています。
 

多様な専門家による協働

各分科会には、医療、リハビリテーション、疫学、公衆衛生、産業保健、人間工学、心理学など、多分野の専門家が参画しています。
分科会ごとの専門性を活かしつつ、定期的な情報共有と連携を通じて、単独の研究では到達できない包括的な就労支援策の確立を目指しています。
 

目指すもの

この4班体制を通じて私たちが目指すのは、
年齢・性別・職種を問わず、慢性の痛みを抱えていても、安心して働き続けられる社会の実現です。
本研究の成果が、政策立案、産業保健現場、医療・リハビリテーションの実践に活かされ、現実の職場環境改善につながることを目指しています。
 

A班|基礎資料・疫学的エビデンスの強化

― 慢性の痛みと「働くこと」の実態を、データで明らかにする ―
A班では、大規模データベースや疫学調査を活用し、慢性の痛みが就労や社会参加に与える影響の実態を明らかにします。
高齢期就労者を含む多様な労働者を対象に、痛みの発生状況、慢性化、業務遂行への影響などを分析し、**就労支援策の基盤となる科学的根拠(エビデンス)**を構築します。
得られた知見は、政策立案やマニュアル作成、企業・産業保健現場での活用につながることが期待されています。
 

B班|リハビリテーション等による復職支援の確立

― 痛みがあっても「働き続けられる」支援をつくる ―
B班では、リハビリテーションや心理療法などの非薬物療法を中心とした復職支援に取り組みます。
慢性の痛みによって休職や就労困難に直面した方が、適切な支援を受けながら職場復帰・就労継続できるよう、集学的アプローチの有効性を検証します。
臨床現場で得られた知見をもとに、実践可能で再現性のある復職支援プログラムの確立を目指します。
 

C班|国外における就労・復職支援策の実態調査

― 世界の知見を、日本の職場へ ―
C班では、海外における慢性疼痛患者の就労・復職支援プログラムを調査し、国際的な視点から有効な支援策を整理します。
論文や公開資料の調査を中心に、必要に応じて現地調査も行い、日本の文化や労働環境に適した支援モデルの検討を進めます。
海外の成功事例と日本の課題を比較することで、日本独自の就労支援策の提案につなげます。
 

D班|普及啓発活動の推進

― 研究成果を、現場で使えるかたちへ ―
D班は、A〜C班で得られた研究成果を統合し、社会に広く届ける役割を担います。
既存の就労支援マニュアルの改訂や、新たなマニュアル・資材の作成を行い、労働者、企業、医療・産業保健関係者に向けて情報発信を進めます。
一方向的な情報提供にとどまらず、現場での活用や効果検証を重視した普及啓発を行い、慢性疼痛対策の社会実装を目指します。


 

プロジェクト名・ロゴ・キャッチコピーに込めた想い

― PaWRD(パワード)誕生の背景 ―
 

プロジェクト名に込めた意味

本研究プロジェクトの正式名称は
Pain & Workflow ReDesign Project(PaWRDプロジェクト)
日本語では
「痛みと働き方の共創リデザイン計画」
としています。
     
 略称は「パワード(PaWRD)」と呼んでいただくことを意図しています。

近年、海外のビジネスや研究の現場では work だけでなく、
workflowworkstream といった言葉が頻繁に使われるようになっています。
それらは単なる「仕事」ではなく、人・時間・環境がつながる“流れ”を含んだ概念です。

慢性の痛みもまた、個人の問題にとどまらず、
働き方・職場環境・支援制度・社会の仕組みと深く結びついています。
そこで本プロジェクトでは、「痛み」と「働き方」を流れとして捉え直し、再設計するという意味を込め、
Workflow ReDesign という言葉をプロジェクト名に取り入れました。

 

ロゴデザインのストーリー

ロゴ

ロゴは、デザイナーから提案された3案の中から、研究班員による投票で原案を決定しました。
最終的なロゴは、その原案をもとに、
色調・配色・フォントを山田代表自らが微調整しています。

「手前味噌ですが、色調や配色を調整することで、
原案が持っていた良さを活かしつつ、
より洗練され、長く使えるロゴに仕上がったと感じています。」


という代表の言葉どおり、
研究プロジェクトとしての信頼感と、社会実装を見据えた現代性の両立を意識しました。

また、文字組みには、別案で使われていたフォントを組み合わせています。
特に「R」の文字は、印象的でシャープな造形が特徴で、
「ReDesign」の思想を象徴する存在として採用されました。

このロゴには、
痛みと働き方を“対立するもの”ではなく、共に再設計していく
というプロジェクトの姿勢が込められています。
そのプロセス自体も大切にしたいという思いから、
ホームページではロゴ誕生の背景とデザイナーによるロゴにまつわるストーリー(“つながりの流れが、痛みをやさしくほどく”)を紹介するページを設けました。

 

キャッチコピーについて

現在使用しているキャッチコピーは、次の一文です。

科学的エビデンスで働き方をリデザイン。
働くすべての人に、痛みの最適な支援を。


このコピーは、研究班と制作側とのやり取りの中で、言葉の順序まで丁寧に検討されました。
当初の案では
「最適な痛みの支援」
という表現も検討されましたが、
読み手によっては「最適な痛み」と区切られてしまう可能性があるため、
「痛みの最適な支援」という語順を採用しています。

小さな違いですが、「痛みを最適化する」のではなく、「痛みを抱える人への支援を最適化する」という本プロジェクトの立ち位置を、より正確に伝える表現だと考えました。

 

最後に

PaWRDプロジェクトは、研究のための研究ではなく、科学的エビデンスを社会に届け、現場で使われることを目指しています。

プロジェクト名、ロゴ、キャッチコピーは、
その姿勢を言葉とデザインで共有するための“入口”です。

このホームページが、
痛みに悩む当事者の方、
現場で支援にあたる専門職の方、
より良い職場環境を模索する企業や組織の方にとって、
次の一歩につながる場所になることを願っています。